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開業手続き

個人事業か法人か?菓子店開業の形態選びの考え方

結論から言うと、開業の形態は「最初の1〜2年にどれだけ利益が出て、何人雇い、どんな契約をするか」で決めます。利益が小さく、従業員が少なく、店舗も1つなら、個人事業で始めて軌道に乗ってから法人にする進め方が現実的です。最初から従業員を複数雇う、法人としか取引しない相手がいる、複数店舗を前提にする場合は、最初から法人も有力です。ただし菓子店は、形態を変える際に営業許可の手続きが必要になるため、後から変えるコストを見込んで選びます。

開業時の手続きと費用

個人事業は、税務署への開業届と、青色申告を選ぶ場合の青色申告承認申請書(業務開始から2か月以内。1月1日〜15日開業は3月15日まで)で始められます(国税庁 No.2070)。設立登記や定款認証の費用はかかりません。

株式会社は、定款の作成・公証人の認証・法務局での設立登記が必要です。公的な費用は次のとおりです。

  • 登録免許税:資本金の1000分の7。15万円に満たなければ15万円(法務省)
  • 定款認証手数料:資本金100万円未満で3万円、300万円未満で4万円、300万円以上で5万円。一定条件を満たす100万円未満の会社は1万5,000円(日本公証人連合会)
  • 定款の謄本代:1枚250円。紙の定款は収入印紙4万円が必要ですが、電子定款なら不要です(同連合会)

合同会社は定款認証が不要で、登録免許税は資本金の1000分の7、最低6万円です(法務省)。

税負担の考え方

個人事業の所得には、所得税が5%から45%の7段階で課されます。課税所得が695万円以上で23%、900万円以上で33%です(国税庁 No.2260)。これに復興特別所得税、住民税、事業税が加わります。

法人税は、資本金1億円以下の中小法人で、年800万円以下の所得に15%、超える部分に23.2%です(国税庁 No.5759)。15%は期限付きの特例のため、設立時点の適用状況を確認してください。このほか法人住民税の法人税割と法人事業税がかかります。

税率だけ見ると、利益が大きいほど法人が有利に見えます。しかし法人では、代表者への報酬は役員報酬になり、原則として毎月同額でないと経費にできません(国税庁 No.5211)。受け取る報酬には所得税がかかります。法人住民税の均等割は赤字でも負担し、名古屋市では資本金等1,000万円以下・従業者50人以下で市民税が年5万円、愛知県の県民税は年21,000円です。どの利益水準から法人が有利になるかは、報酬額や家族の状況で変わります。

社会保険の違い

法人は、代表者1人だけでも健康保険・厚生年金保険の強制適用事業所で、保険料は事業主と従業員が半分ずつ負担します(日本年金機構)。

個人事業は、常時5人以上の従業員がいて、法定17業種に当たる場合に強制適用です。「物の製造」「物の販売」は含まれ、飲食サービス業は含まれません(厚生労働省)。菓子の製造販売が中心なら対象になる可能性があり、店内飲食が中心なら対象外の可能性があります。年金事務所への確認が必要です。2029年10月からは業種を問わず適用対象になりますが、その時点で既にある事業所は当分の間対象外です(同省)。

消費税の免税と資本金

基準期間(個人は前々年、法人は前々事業年度)の課税売上高が1,000万円以下なら、原則として納税義務は免除されます(国税庁 No.6501)。設立1・2期目の法人は基準期間がありませんが、期首の資本金が1,000万円以上だと免税になりません(同 No.6503)。ただし、前年(法人は前事業年度)の前半6か月の課税売上高が1,000万円を超えると免税にならない場合があります。免税を前提にした資金計画は避けてください。

インボイス発行事業者の登録で課税事業者になった場合の「2割特例」を使えるのは、2026年9月30日を含む課税期間までで、10月以降に始まる課税期間は対象外です。国税庁の令和8年度税制改正特集では、個人事業者に限り令和9年分・10年分に「3割特例」を設けるとされ、法人は対象外です。成立状況と要件は国税庁で確認してください。

融資・取引先・許可の名義

法人は、会社と個人の財産が分かれ、契約や口座を会社名義で持てる点が強みです。ただし融資で代表者の個人保証を求められることもあります。資金計画の組み方は「パティスリー開業の資金計画の考え方」をご覧ください。

菓子店で特に注意したいのが許可の名義です。愛知県の案内では、営業者そのものが変わる場合は新規の取扱いとされ、事業譲渡を受けた場合などは承継届の対象とされています。世田谷区のように、個人から法人成りした場合を承継届の対象に含める自治体もあり、扱いは自治体と状況で分かれます。法人成りで新規許可になるか承継で足りるかは、管轄の保健所で必ず確認してください。進め方は「保健所への事前相談ガイド」で整理しています。設立手続きは物件契約や内装工事と並行するため、「開業スケジュールの立て方」を参考に日程へ織り込んでください。

まず個人で始めて法人成りする選択肢

個人で始める利点は、設立費用と事務負担を後回しにでき、売上の見通しがついてから判断できることです。一方、法人成りの時には、許可・承継の手続き、賃貸借契約・取引口座・リース・保険の名義変更、会計の締め直しが発生します。最初から法人にする場合は、設立費用、赤字でも払う均等割、社会保険料の事業主負担を最初から負います。

判断の目安となる問い

  1. 開業初年度に雇う従業員は何人か(社会保険)
  2. 初年度と2年目の利益はいくらを見込むか(税負担)
  3. 初年度の課税売上高は1,000万円を超えそうか(消費税)
  4. 融資や取引先に、法人であることを求められるか
  5. 2店舗目や卸売など、事業を広げる計画があるか(許可手続きの回避)

税額は個別の事情で大きく変わります。個人のまま続けた場合と法人にした場合の税額を、税理士に試算してもらうのが最も確実です。相談時は、初年度の売上・利益の見込み、人員計画、役員報酬の想定額、融資の有無を持参してください。将来の法人成りを見込むなら、法人プランへ移行しやすい会計ソフトを選ぶと乗り換えの手間が減ります。比較は「個人店におすすめの会計ソフトの選び方」をご覧ください。

Grace(愛知県で開業準備中の菓子店)は、株式会社として設立しています。ただし本記事は一般的な考え方で、適した形態は事業の規模と計画によって変わります。


開業形態の選び方や、開業準備の優先順位づけについては、FSPの問い合わせページからご相談いただけます。


参照元

※ 税額・社会保険の適用・営業許可の扱いは、個別の事情や自治体により異なります。実際の判断にあたっては、税理士・年金事務所・管轄の保健所に必ず確認してください。

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