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採用・人材

飲食業界の採用が難しい理由と、個人店にできる工夫

飲食業界で採用が難しいのは、感覚的な話ではなく、公的統計にはっきり表れている構造的な問題です。結論から言うと、個人店が大手チェーンと同じやり方(採用媒体に広く出稿し、応募を待つ)で戦おうとしても勝ち目は薄く、個人店に向いた工夫は、①応募前に条件をすり合わせてミスマッチを減らす、②育成を仕組み化して未経験者採用のハードルを下げる、③採用チャネルを絞る、の3つに集約されます。

統計で見る「なぜ難しいか」

まず数字で確認します。厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年7月分)」によると、全職業計の有効求人倍率が1.05倍であるのに対し、「飲食物調理従事者」は2.18倍、「接客・給仕職業従事者」は2.30倍でした。なお、この3つの数値はいずれも同じ参考統計表(全国計・常用(パート含む))から取ったものです。同じ月に「有効求人倍率1.18倍」として公表されている数値は季節調整値で、集計方法が違うため一致しません。職業ごとの比較は、集計方法をそろえた職業別の表の中で行う必要があります。

有効求人倍率が2倍を超えるということは、求職者1人に対して求人が2件以上ある状態で、大手も個人店も同じ狭い人材プールを奪い合っていることを意味します。

さらに、厚生労働省「令和6年雇用動向調査結果の概況」では、全産業計の入職率14.8%・離職率14.2%に対し、「宿泊業,飲食サービス業」は入職率28.4%・離職率25.1%と、いずれも全産業の中で最も高い水準でした。就業形態別に見ると、一般労働者では入職率21.2%・離職率18.1%、パートタイム労働者では入職率33.3%・離職率29.9%です。「採用してもすぐに人が入れ替わる」構造が、統計上もはっきり裏付けられています。

個人店が大手と同じ土俵で戦うと不利な理由

この狭い人材プールの中で、個人店は次の点で大手チェーンより不利になりやすい構造があります。

  • 採用予算・知名度の差:求人媒体への出稿量や認知度で見劣りしやすい
  • 賃金水準への対応力:最低賃金は毎年引き上げられており(愛知県は2026年10月1日から時給1,195円に改定予定)、人件費に占める固定費の比率が高い個人店ほど、賃金競争で不利になりやすい
  • シフトの融通:人数が少ないほど、1人が急に休むと現場が回らなくなるため、かえってシフトの柔軟性を持たせにくい

これらは個人店の努力だけで埋めきれない構造的なハンデです。だからこそ、大手と同じ土俵(広く募集して待つ)ではなく、別の土俵で戦う工夫が必要になります。

個人店にできる工夫

①応募前に条件をすり合わせる

面接の場だけで条件を確認すると、双方に「聞きそびれ」が起き、入社後のミスマッチにつながります。事前確認フォームのような形で、勤務条件・NG事項を応募の早い段階で明文化しておくと、ミスマッチ入職とそれに伴う早期離職を減らせます。

②育成を仕組み化し、未経験者採用のハードルを下げる

有効求人倍率が高い状況では、経験者だけを条件にすると母集団がさらに狭くなります。OJT計画やスキルマップのように「誰が・いつまでに・何を教えるか」を仕組みとして先に決めておけば、未経験者を採用しても育成が属人化せず、採用対象を広げられます。

③採用チャネルを絞る

個人店が複数の求人媒体に手を広げると、運用が追いつかず中途半端になりがちです。飲食業界に強みを持つ求人サービスに絞り込み、そこに運用を集中させたほうが、限られた採用予算・工数の中では効果が出やすくなります。

個人店ならではの強み

不利な点だけでなく、個人店には大手にない強みもあります。経営者本人が採用から入社後の育成まで一貫して関われる距離の近さ、意思決定の速さ(条件面の即答がしやすい)は、大手チェーンでは出しにくい魅力です。採用活動では、不利な点を無理に埋めようとするより、この距離の近さを前面に出したほうが差別化になります。

私自身の経験から

Grace(2026年10月開業予定の愛知県のパティスリー)の開業準備では、応募者との条件確認を面接の場任せにしないよう、アルバイト・正社員それぞれの入社前事前確認フォームを用意しています。入社後の育成側も、人員配置ルールとシフトテンプレート、OJT計画、スキルマップの運用ルールを書式として整備しました。

まとめ

飲食業界の採用難は、有効求人倍率・入職率・離職率のいずれの統計を見ても裏付けられる構造的な問題であり、個人店の努力不足だけが原因ではありません。だからこそ、大手と同じやり方をなぞるのではなく、①応募前の条件すり合わせ、②育成の仕組み化、③採用チャネルの絞り込み、という個人店に合った打ち手を先に整えておくことが重要です。開業準備のどの段階で採用活動を始めるべきかについては「開業スケジュールの立て方」もあわせてご覧ください。


採用の仕組みづくりや、開業準備における優先順位づけについては、FSPの問い合わせページからご相談いただけます。


参照元

※ 求人サービスの記載は例示であり、特定のサービスを推奨するものではありません。統計・法令の数値は2026年9月時点の公式発表に基づく参考情報です。有効求人倍率など毎月更新される数値、最低賃金など毎年改定される数値は、運用前に必ず厚生労働省・都道府県労働局の公式サイトで最新情報をご確認ください。本記事で言及した飲食特化の求人サービスについては、アフィリエイト提携の審査中または未申請のため、本記事にアフィリエイトリンクは含まれていません(提携完了後、実装を予定しています)。

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