菓子製造業許可と飲食店営業許可の違い・取り方
菓子店を開業するとき、最初につまずきやすいのが「自分の店にはどの許可が必要なのか」という点です。結論から言うと、焼き菓子やケーキ、パンなどの完成品を作って売るだけなら「菓子製造業許可」で足ります。店内でお客様に飲食してもらう形態(イートインでのドリンク提供や軽食の調理など)が加わる場合は、別途「飲食店営業許可」が必要になる場面が出てきます。この記事では、両者の違いと、どちらを取ればいいか迷ったときの考え方を整理します。
菓子製造業許可とは
菓子製造業許可は、食品衛生法上の営業許可業種のひとつで、「菓子(パン及びあん類を含む)を製造する営業」に対して必要になる許可です。ケーキ、焼き菓子、パン、和菓子などの完成品を製造・販売する場合はこの許可が対象になります。
2021年6月1日施行の食品衛生法改正で、営業許可業種は34業種から32業種に再編されました。この改正で、菓子製造業の対象範囲もいくつか整理されています。
- 完成品としての菓子・パンの製造が対象で、菓子種(冷凍パン生地やもなかの皮など、それ自体では完成品でない中間製品)の製造は含まれません
- 調理パン(サンドイッチや惣菜パンなど)の製造も、菓子製造業許可の範囲でできるようになりました
- 菓子製造業許可を持つ店舗で、購入した菓子やパンに飲料を添えて店内で飲食提供することも、別途飲食店営業許可を取らなくても可能になりました
飲食店営業許可とは
飲食店営業許可は、「食品を調理し、又は設備を設けて客に飲食させる営業」に必要な許可です。その場で客に飲食させる、あるいは短時間のうちに消費されることを前提に食品を加工・調理して提供する業態が対象になります。カフェとしてドリンクや軽食を調理して出す、イートインスペースで焼きたてを提供するといった形態は、こちらの許可が必要になる可能性が高くなります。
二つの許可の違い
| 観点 | 菓子製造業許可 | 飲食店営業許可 |
|---|---|---|
| 業務の中心 | 完成品の製造 | 調理と、その場での提供 |
| 想定する消費のタイミング | 持ち帰り・後日消費が前提 | その場、または短時間での消費が前提 |
| 施設基準 | 製造工程に応じた基準(自治体条例による) | 調理・提供スペースに応じた基準(自治体条例による) |
製造が中心の物販型パティスリーは菓子製造業許可、店内での飲食提供が中心の業態は飲食店営業許可、両方を兼ねる業態(製造販売+イートイン調理)は両方の許可が必要になるケースがある、というのが基本的な整理です。
どちらを取ればいいか、迷ったときの考え方
私自身、Grace(2026年10月開業予定のパティスリー)の許可取得を進める中で最初に整理したのも、この「自分の店の営業形態は、法律上どちらの定義に当てはまるか」という点でした。判断の起点は「お客様が店内で調理された食品をその場で食べる場面が発生するか」です。
- 焼き菓子・ケーキ・パンを製造して販売するだけ → 菓子製造業許可
- 店内でドリンクを淹れて提供する、軽食をその場で仕上げて出す → 飲食店営業許可も必要になる可能性
- どちらとも判断がつかない業態(イートインの範囲や、購入品への飲料提供の扱いなど) → 保健所への事前相談が必須
施設基準の細部(手洗い設備の仕様、調理場と製造場の区画など)は自治体の条例によって差があります。同じ「菓子製造業」でも、自治体によって求められる設備が異なることがあるため、最終的な判断は必ず管轄の保健所に確認してください。
許可取得の一般的な流れ
- 保健所への事前相談(図面を持参し、営業形態と施設基準を確認)
- 施設の設計・工事(保健所の指摘を反映)
- 許可申請書類の提出
- 施設検査(保健所職員による現地確認)
- 許可証の交付
このほか、営業許可業種を問わず「食品衛生責任者」の配置と、HACCPの考え方に沿った衛生管理計画の作成が必要です。これらは菓子製造業・飲食店営業のどちらの許可でも共通して求められます。
なお、改正前から許可を取得している事業者については、既存の許可の有効期間満了まで新規の許可取得は不要で、満了日までに新制度に基づく許可へ切り替える経過措置が設けられています。これから新規開業する場合は、最初から現行の32業種の区分で申請することになります。
食品衛生責任者になるには
食品衛生責任者は、栄養士・調理師・製菓衛生師など一定の資格を持つ人であれば新たな講習を受けずに就任できますが、それ以外の場合は都道府県知事等が行う食品衛生責任者養成講習会(または知事等が適正と認める講習会)を受講することで資格を得られます。菓子製造業・飲食店営業のどちらの許可でも、食品衛生法に基づき責任者の配置が求められます。有資格者を雇わない場合は、開業予定者自身が講習会を受講して責任者になる進め方も選択肢になります。講習会は予約制で開催枠が限られていることもあるため、許可申請のスケジュールから逆算して早めに申し込んでおくことをおすすめします。
許可取得にかかる期間の考え方
許可取得までの期間は、施設工事の進捗と保健所の審査スケジュールに左右されるため一律には言えませんが、「事前相談→施設検査→許可証交付」という流れ自体に一定の日数がかかることは意識しておく必要があります。特に施設検査は、内装工事が完了してから予約・実施されるため、工事の遅れがそのまま開業日の遅れに直結します。開業希望日から逆算して、施設工事の完了時期と保健所への事前相談・検査予約のタイミングを早い段階からすり合わせておくことが、スケジュール管理の要点です。
まとめ
菓子製造業許可と飲食店営業許可は、「完成品を作って売るか」「店内で調理して食べさせるか」という業務の中心で区分されます。ただし施設基準の詳細は自治体条例に委ねられている部分が大きく、業態によっては両方の許可が必要になることもあります。開業計画の初期段階で、必ず管轄の保健所に事前相談することをおすすめします。
開業や事業計画の相談は、FSPの問い合わせページからお気軽にご連絡ください。
参照元
- 厚生労働省 食品衛生法改正(令和3年6月1日施行、営業許可業種の34業種から32業種への再編)
- 吹田市「食品衛生法改正による営業許可業種の再編(令和3年6月1日施行)」https://www.city.suita.osaka.jp/kenko/1018645/1018653/1018654/1015415.html
- 江東区「食品衛生法の改正に伴う営業許可・営業届出について」https://www.city.koto.lg.jp/260404/fukushi/ese/shokuhin/7000.html
- 一般社団法人東京都食品衛生協会「食品衛生責任者について」(資格要件・養成講習会の概要、食品衛生法第51条に基づく配置規定)https://www.toshoku.or.jp/training/seki-gaiyou.html
※ 施設基準・許可要件の詳細は自治体によって異なります。実際の申請にあたっては必ず管轄の保健所に確認してください。
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