開業前に決めるべき会計・バックオフィスの仕組み
菓子店や飲食店の開業準備というと、商品開発や物件、内装に意識が向きがちですが、会計・バックオフィスの仕組みは、開業前に決めておかないと、開業後にまとめて痛い目を見る領域です。この記事では、開業前に決めておくべきバックオフィスの仕組みを、優先度の高い順に整理します。
なぜ「開業前」に決める必要があるのか
開業直後は、製造・接客・仕入れ対応に追われ、経理や記録の仕組みを整える時間が取れなくなります。結果として、レシートを箱に溜め込んだまま数ヶ月が経過し、確定申告の直前に慌てて整理する、というパターンに陥りがちです。仕組みを開業「前」に決めておけば、開業後は運用するだけで済みます。逆に、仕組みがないまま開業すると、日々の記帳が後回しになり、資金繰りの実態が見えないまま経営判断をすることになります。
優先度1:会計ソフトを決める
まず決めるべきは会計ソフトです。個人事業主・小規模法人向けのクラウド会計ソフトは、銀行口座やクレジットカードの明細を自動で取り込み、仕訳を自動提案してくれる機能があり、経理の初期学習コストを大きく下げてくれます。
選定の観点は次の3つです。
- 確定申告(青色申告)に対応しているか:個人事業主で節税メリットの大きい青色申告特別控除を受けるには、複式簿記での記帳が必要です。対応した会計ソフトを選ぶことで、複式簿記の知識がなくても記帳を進められます
- 税理士との連携がしやすいか:税理士に決算・申告を依頼する場合、その税理士が使い慣れているソフトかどうかも確認しておくと、やり取りがスムーズになります
- POSレジ・銀行口座との連携範囲:後述するPOSレジや、事業用口座・クレジットカードとのデータ連携が可能かどうかは、日々の記帳の手間を大きく左右します
代表的なクラウド会計ソフトの例としては、freee会計やマネーフォワード クラウド会計などがあります。
優先度2:POSレジを決める
菓子店・飲食店では、売上データがそのまま経営判断の材料になります。どの商品がどの時間帯にどれだけ売れたか、客単価はどう推移しているかといったデータを、レジの操作と同時に自動で蓄積できるかどうかは、開業後の意思決定の速さに直結します。
選定の観点は次の3つです。
- 会計ソフトとのデータ連携:POSレジの売上データが会計ソフトへ自動で連携されると、日々の記帳の手間が大きく減ります
- 在庫管理機能の有無:原材料や商品在庫を紐付けて管理できるかどうかは、原価管理の精度に関わります
- 初期費用・月額費用と、店舗規模の見合い:多機能なシステムほど月額費用も上がる傾向があるため、開業初期の身の丈に合ったプランを選ぶことが大切です
代表的なPOSレジサービスの例としては、SquareやAirレジ、スマレジなどがあります。
優先度3:証憑(レシート・領収書)の管理ルールを決める
会計ソフトとPOSレジを導入しても、日々の支払いの証憑(レシート・領収書・請求書)をどう保管し、いつ・誰が入力するかというルールがなければ、記帳は滞ります。開業前に「支払いをしたその日のうちに、スマートフォンで撮影してクラウドに保存する」といった、単純で継続しやすいルールを決めておくことをおすすめします。証憑の電子保存については、電子帳簿保存法の要件が関わってくるため、対応する会計ソフトの機能や、必要であれば税理士に確認しながら運用ルールを決めてください。
優先度4:税理士・顧問契約の要否を決める
開業当初から税理士と顧問契約を結ぶかどうかは、事業規模や自分の経理知識によって判断が分かれます。判断の目安としては、「複式簿記の記帳・月次の数字の読み方に不安があるか」「開業初年度から融資や助成金の申請を予定しているか」といった点が挙げられます。顧問契約を結ばない場合でも、確定申告時期だけスポットで依頼できる税理士を事前に見つけておくと安心です。
優先度5:シフト・勤怠管理の仕組み
スタッフを雇う予定がある場合は、シフト作成と勤怠記録の仕組みも開業前に決めておくべき項目です。紙のシフト表や口頭でのやり取りに頼る運用は、スタッフが数名のうちは回っても、人数が増えるにつれて調整の手間が急激に膨らみます。勤怠管理システムを導入する場合は、給与計算ソフトとの連携範囲や、法定労働時間・休憩時間の管理が機能として備わっているかを確認しておくと、労務管理の抜け漏れを防ぎやすくなります。開業当初は少人数だからと後回しにせず、採用計画を立てる段階で一緒に検討しておくことをおすすめします。
私自身の経験から
私自身、Grace(2026年10月開業予定のパティスリー)の開業準備では、会計ソフトとPOSレジ(Square)を、製造・接客の準備で忙しくなる前の早い段階で導入し、初期設定まで済ませました。その際に意識したのは、「蓄積されるデータや情報を何に活用するか」を先に決めてから仕組みを設計することです。売上データを商品構成の見直しに使うのか、原価管理に使うのか。活用の目的が決まっていれば、ツール選定も設定の粒度も迷いません。バックオフィスは初期設計がとても重要で、後回しにするほど「今さら変えられない」状態になりやすいため、開業準備の初期段階で一度時間を取って検討することをおすすめします。
まとめ
開業前に決めておきたいバックオフィスの仕組みは、優先度順に、①会計ソフト、②POSレジ、③証憑管理のルール、④税理士との関わり方、⑤シフト・勤怠管理の仕組み、の5つです。いずれも一度決めてしまえば運用フェーズに入れるものばかりなので、商品開発や内装の準備と並行して、開業の数ヶ月前から着手することをおすすめします。
バックオフィスの仕組み化や、開業準備の優先順位づけについては、FSPの問い合わせページからご相談いただけます。
参照元
- 国税庁 No.2072「青色申告特別控除」(複式簿記による記帳要件・55万円/65万円控除の要件)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2072.htm
- 国税庁「電子帳簿等保存制度特設サイト」(証憑の電子保存に関する制度概要)https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/tokusetsu/index.htm
※ 会計ソフト・POSレジのサービス名は例示であり、特定のサービスを推奨するものではありません。自社の規模・業態に合ったサービスを比較のうえご選定ください。
本記事は将来的にアフィリエイト広告を含む場合があります。詳細は免責事項をご確認ください。